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「モチイエ女子」、ありだと思う。

つい最近まで、女性がひとりで家をもつって
ごく少数派で、ちょっと変わってると思われていた。
マイホームをもつことは、家族の幸せと考えられていた。

いったい誰がそんなことを決めたんだろう。

女性が家をもつって、あんがいあたりまえじゃない?

そんな声が聞こえてきそうなほど、
今、ごくフツーの女子たちが、じぶんの家を買う時代になっています。

家というホームグラウンドを手に入れ、
これまで以上にパワフルに、イキイキと輝いてる「モチイエ女子」。

そんな新しい女性たちが増えれば、この国はもっともっと元気になるから。
なによりそんな未来が、素敵でおもしろそうに思うから。
私たちはこの「モチイエ女子project」を通し、
その生き方、あり!と宣言します。

モチイエ女子web

お知らせ

モチイエ女子webにて、エッセイなど多数寄稿いただきました 雨宮まみさんがご逝去されました。心からお悔やみを申し上げます。 感謝と哀悼の意を込めまして、これまでの雨宮さんの作品、およびご出演いただいたコンテンツは、このまま掲載させていただきます。 どうか、ご愛読いただけますと幸いです。

理想の部屋まで何マイル? MILE 05

掃除

毎年、12月が近づいてくると何とも言えない気持ちになる。

「ああ、今年もあっという間に過ぎていってしまった」「何か実りのあることって、今年できたのかなぁ」「全力を尽くして頑張った、って言えないな……」。そんな悔いや、「いや、諦めるにはまだ早い、今からでもできることはある。来年のために、今のうちに手を打たなきゃ」という焦り、そして、そういう気持ちと相反するにぎやかで浮かれた街のムード。
クリスマスのためのデコレーション、贈り物のシーズンに向けたショーウインドウのディスプレイ、ファーや帽子にカシミアのコートのエレガントな装いがあふれ、イルミネーションが輝く季節。忘年会と称して、人と会う機会も増える。全力で楽しみたい季節だけれど、冬休み前で誰もが仕事に忙殺される季節でもある。アップダウンが激しく、慌ただしいこの季節の波を、綱渡りをし、空中ブランコを飛び移るようにしてなんとか乗りこなしていくのが、私は嫌いではない。

けれど、そんな季節がちょっと疲れるのも事実だ。
出かけることが多くなり、自宅では慌ただしく仕事をし、家は荒れ放題になってゆく。そこに重くのしかかってくるプレッシャー、それが「大掃除」。すごくきれい好きで、こまめに掃除をしている人以外には、気が重くなる言葉ではないだろうか。

大掃除で気が重いのは、換気扇の掃除、エアコンの掃除、カーテンなどの大物ファブリックの洗濯、窓拭きに床磨き……。書き出してみると、実はひとつひとつはそれほど重労働ではない。なのに気が重いのは、普段見ないようにしている汚れを直視するはめになるからだろう。

「こんな汚れた窓から差し込む朝日や夕陽を見ていたんだな」「こんなフィルターから出てくる空気で過ごしていたんだな」と感じることが、実際の掃除の作業よりもずっと、心を重くする。まさに一年の怠惰を突きつけられているような気分になってきて、それが他の「今年達成できなかった目標」とともに、自分をチクチク責めてくる。

冷蔵庫を拭いているときなんか、もう「ほんとにごめん……」と冷蔵庫に謝りたくなってくるし、広い窓、古いもののまだまだ現役なエアコン、作り付けの換気扇にも「私が手入れを怠ったせいで、みなさんの本来のポテンシャルを発揮できない状態にしてすみませんでした!」と、作った人にお詫びしたくなってくる。

この気持ちと、まとめて掃除をする肉体的な疲れから逃れるために私が少し前から導入しているのが「小掃除」制度である。

理想の部屋まで何マイル? MILE 05

まぁ、そんなに堂々と言い切るほどたいしたことではないのだが、「ちょっと面倒だな」と感じる大物掃除を小分けしてやるやり方である。具体的には「大掃除……憂鬱だな~」と思ったときに、その気持ちを見過ごさず、「よし、一個だけやっとこう!」と換気扇のフタを外してみたり、窓だけ拭いてみたりする。スッキリするし、少しずつ大掃除の重圧が軽くなっていく。

掃除が済んでいくにつれ、余裕が出てきて「雑誌の整理もしておこうかな」「服も見直してみようかな」と、いちばん頭を使う「整理もの」へと手を出す気力もわいてきたりする。よく使うのに取り出しづらい場所に置いているものを、取り出しやすい位置に置いてみようとか、そういうこともし始める。

そうして棚や引き出しを片っ端から開けていくと、「もったいないから」と使わないでしまっておいた品などを発見して、「そういえばこれ、使っちゃおう」と思って、普段使いのものより高級なせっけんやキャンドルなんかを出してみたり、部屋に飾っているものの配置を変えてみたり、同じ「片づけ」でも、楽しい方向の片づけに気持ちが向いてくる。

部屋がきれいに、素敵な空間になっていくにつれ、ふと足元を見て「スリッパぼろぼろだな……買い替えようかな」と普段気づかないことにも気づいて、部屋をもっと過ごしやすい、居心地のいい場所にするための工夫を考えるのが楽しくなってくる。
「来年こそは、マットレスを買い替えよう」とか、「ラグを変えれば、色の調和の取れた部屋になりそう」とか、次に必要なものが見えてきたり、模様替えのアイデアがわくのもこの段階だ。磨いたバスルームでゆっくりお風呂に浸かりながら、今後の部屋の計画を考えるのは、年末の楽しみである。

年末だけでなく、なんだかモヤモヤするとき、集中できないとき、気持ちが落ち着かないとき、ものごとの判断に迷ったときなど、私はよく掃除をする。軽く床を掃除したり、小物を飾っている場所を拭いたり、とりあえず取っておいた美術展や映画のチラシを整理したり。

そうして部屋全体や、部屋に置いてあるものをあらためて意識すると、気になる部分や変えたい部分、本当に気に入っているものやそれを活かすための配置などを考えるようになる。頭も身体も使う作業だけれど、ひとつひとつはそんなに大仕事ではないし、そうしてちょっとしたことを変えるだけで、部屋がいつもより輝いて見えて、なんとなく前向きな気持ちになってきたりもする。

映画やマンガの中で、すごく散らかった部屋や、めちゃくちゃに汚れている部屋を、すっきり掃除して見事に整理する場面を見るのが、私は大好きだ。ほこりや汚れを取り、使いやすいようにものを並べ変え、あるものを活かして部屋を飾り、居心地のいい部屋に変えてゆくのは、まるで魔法のように思える。

そしてその魔法は、自分も使える魔法なのだ。

文=雨宮まみ

雨宮まみ

ライター。編集者を経てフリーのライターになり、女性としての自意識に向き合った自伝的エッセイ『女子をこじらせて』(ポット出版)を上梓、「こじらせ女子」が2013年度の新語・流行語大賞にノミネートされる。 著書に、対談集『だって、女子だもん!!』(ポット出版)、『ずっと独身でいるつもり?』(ベストセラーズ)、『女の子よ銃を取れ』(平凡社)など。

プロフィール写真=松沢寫眞事務所 / イラスト=網中いづる

「モチイエ女子project」公式Facebookページ「モチイエ女子Park」
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