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「モチイエ女子」、ありだと思う。

つい最近まで、女性がひとりで家をもつって
ごく少数派で、ちょっと変わってると思われていた。
マイホームをもつことは、家族の幸せと考えられていた。

いったい誰がそんなことを決めたんだろう。

女性が家をもつって、あんがいあたりまえじゃない?

そんな声が聞こえてきそうなほど、
今、ごくフツーの女子たちが、じぶんの家を買う時代になっています。

家というホームグラウンドを手に入れ、
これまで以上にパワフルに、イキイキと輝いてる「モチイエ女子」。

そんな新しい女性たちが増えれば、この国はもっともっと元気になるから。
なによりそんな未来が、素敵でおもしろそうに思うから。
私たちはこの「モチイエ女子project」を通し、
その生き方、あり!と宣言します。

モチイエ女子web

お知らせ

モチイエ女子webにて、エッセイなど多数寄稿いただきました 雨宮まみさんがご逝去されました。心からお悔やみを申し上げます。 感謝と哀悼の意を込めまして、これまでの雨宮さんの作品、およびご出演いただいたコンテンツは、このまま掲載させていただきます。 どうか、ご愛読いただけますと幸いです。

理想の部屋まで何マイル? MILE 21

家の中でのオンとオフ

私のように、自宅で仕事をしていると「オンとオフはどう切り替えているのですか?」と質問されることがよくある。
全力で「そんなもんあるわけないじゃないですか!眠くなったら寝るんです!」と答えたい気持ちでいっぱいであるが、そういうわけにもいかない。私と近い職種でも、きっちり毎朝定時に起き、食事の時間もだいたい決まっていて、夕方には仕事を終えて普通に会社員の友人たちと出かけたりできるような、まともな生活を送っているフリーの皆さんもたくさんいるのだ。

もともとの性格や性質、どのような場面で集中力が発揮されやすいか、などの条件もあるのだと思うが、私には「訓練すれば、きっちり起きて、きっちり集中できるようになるのではないか。そして、そうなる努力を自分はさぼっているのではないか」という気持ちが、常にある。
とはいえ、何も浮かばないときは浮かばないし、書くだけなら書くことはできるが、出来上がったものがものすごくつまらなくて結局すべて消してしまうこともある。実作業を進めればそれでいい、という問題でもない。今のところ、自分のペースでやるしかないと思っている。

しかし、仕事が切羽詰まってくるときというのは、家の中のすべてが切羽詰まってくる。気がつけば洗濯物もたまっているし、干してあるものを取り込む気力もなかったり、明日は取材があるからアイロンのかかったシャツが着たいのに、もちろんアイロンなんかかけてなかったり、「アイロンなんかかけてるヒマがあればさっさと仕事をしろ!」という心の声が聞こえてきたり……。

こういうことは、たとえフリーの身でなくても、ちょくちょくあることなのではないだろうか。
とにかく疲れていて、何もせずに寝たい、とバターンと布団に倒れこんだとたん、目に入ってくる積みっぱなしの郵便物、読んでない本の山、いつか整理しようと思って出しておいた未整理の小物たち……。このままパタリと寝てしまいたいのに、それらが視界に入ってしまうと、「オフ」のスイッチがスパーンときれいに入ってくれない。
「何かやり残してること、ありますよね?」とチクチク責められるような気持ちで、中途半端な睡眠へと誘われ、起きたらまた片付いていないものたちが「おはようございます!」と、爽やかでない朝の挨拶をかましてくれる。

自分の部屋、というのは本来、「オフ」のための空間なのだが、最近は会社員の方でも仕事を自宅に持ち帰ることも多いと聞くし、いくら「オフ」とはいえ、家事を何もしなくてもいい空間なんて、執事や召使のような人がいる家でなければ不可能だろう。

理想の部屋まで何マイル? MILE 21

「何もしたくない」。恥ずかしながら、これが「オフ」の状態の私の本音である。しかし、何もしなくては家に食べるものもないし、部屋は散らかっていく一方だ。そんな場所でくつろげるか、充実したオフが過ごせるか、というと……。読みたい本を探すために積まれた本をひっくり返し、お腹がすいたといっては何か食べるものがないか食べ物ストック棚をひっくり返し、そういうことをしている間にも埃のたまった棚が気になり……。気分的には気楽なオフなはずなのに、「やるべきこと」が見えてしまって、なんとなーく「やらねばならぬことを放置している」という罪悪感を抱えた、気が重いオフになりがちだ。
同じオフであっても、片付いた部屋の窓辺で、好きなカップで紅茶でも淹れて、好きな本を開いていたら、どんな素敵なオフだろうか。
誰も見ていないにしても、いや、誰も見ていないからこそ、「誰も見ていなくても、自分の喜びや楽しみのために一手間かけることのできる自分」であれたら。何より自分が快適だし、そんなふうに自分に手間をかけられることは、自信のひとつになるのではないか、と思うのだ。

と、そんなことを思っていたとき、私はいいものをプレゼントしていただいた。
それは、デザイナーの田中千絵さんが、お子さんのために作っていたToDoリストの「大人バージョン」である。
もともとは、お子さんのお手伝い用のリストで、曜日ごとに「お手伝いしてほしい家事」がリストアップされているもので、クリアしたらシールを貼る、という形式になっている。
私も、仕事をするときはやることをメモに書き出し、終わると横線を引く、というのをよくやるので、家の中のこともこういうふうにすれば楽しくできるのでは? という期待が生まれた。
すると、当の田中千絵さんが「大人のためのToDoリスト」を作ってくださったのである。

あまりにかわいらしくて、最初は書くのがためらわれたが、いざ書こうとすると、どこに何を書いたらいいのか悩み始めた。
ゴミ出し日が決まっている日の前にゴミを整理するとして、それならその前に持ち物の整理をするのはどうか。洗濯をこの日にするとしたら、翌日はアイロンがけの日にするのはどうか。
食料品をまとめて買いに行くのをこの日にするなら、前日は冷蔵庫整理の日にするべきか……。
仕事の雑事もついでに書き込んでしまう。請求書などの面倒な雑務はこの曜日。
ついでに自分のメンテナンス日も書き込む。この日はとにかく、長風呂すること、など。

書く前は正直、書くことによって「あー、今日はあれをやらなきゃ!」と面倒な気持ちが増えるのでは? という不安もあった。けれど、今のところ、効果は逆である。
これまで常に「掃除しなきゃ、アイロンもそろそろ……いや洗濯も……」などと思っていたことが「あ、スケジュールでは明日になってるから、明日でいいや」と思えるし、翌日の予定を先取りしてやってしまったときなどは、大したことをしたわけではないのに、自分に余裕が生まれたような気分になる。さぼったとしても、取り返しのつかないようなことはない。
「ToDoリスト」は、私にとってはあくまでも「ささやかな目標」とか「目安」のようなもので、「絶対にやれよ!」という圧迫感のあるものではなかったのだ。

特に、あまりメリハリのない毎日を過ごしていると、このリストのおかげで曜日を意識するようになったことも、ささやかな収穫である。
意外に、そうした小さなことの積み重ねの上に、「心からくつろげるオフ」というのはあるのかもしれない、と思った出来事だった。

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丁寧な暮らし、上質な暮らしのお手本が溢れ、自分もいつかは理想の部屋に住みたいと思う。でも、忙しくて疲れているから、潤沢なお金がないから、インテリアのセンスに自信がないから、「いつか」はなかなかやってこない――。長年1Kの賃貸に住む著者が、それでも自分なりの理想の部屋に近づこうと奮闘し、「ようこそ」と人を招ける部屋になるまで。「満足な暮らし」を目指すすべての人に贈る、等身大の暮らしエッセイ。モチイエ女子webで連載されたMILE20までのコラムに、1章分の書き下ろしと自宅写真を加え、全3章立てで書籍化されました。
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文=雨宮まみ

雨宮まみ

ライター。編集者を経てフリーのライターになり、女性としての自意識に向き合った自伝的エッセイ『女子をこじらせて』(ポット出版)を上梓、「こじらせ女子」が2013年度の新語・流行語大賞にノミネートされる。 著書に、対談集『だって、女子だもん!!』(ポット出版)、『ずっと独身でいるつもり?』(ベストセラーズ)、『女の子よ銃を取れ』(平凡社)など。

プロフィール写真=松沢寫眞事務所 / イラスト=網中いづる

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