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「モチイエ女子」、ありだと思う。

つい最近まで、女性がひとりで家をもつって
ごく少数派で、ちょっと変わってると思われていた。
マイホームをもつことは、家族の幸せと考えられていた。

いったい誰がそんなことを決めたんだろう。

女性が家をもつって、あんがいあたりまえじゃない?

そんな声が聞こえてきそうなほど、
今、ごくフツーの女子たちが、じぶんの家を買う時代になっています。

家というホームグラウンドを手に入れ、
これまで以上にパワフルに、イキイキと輝いてる「モチイエ女子」。

そんな新しい女性たちが増えれば、この国はもっともっと元気になるから。
なによりそんな未来が、素敵でおもしろそうに思うから。
私たちはこの「モチイエ女子project」を通し、
その生き方、あり!と宣言します。

モチイエ女子web

お知らせ

モチイエ女子webにて、エッセイなど多数寄稿いただきました 雨宮まみさんがご逝去されました。心からお悔やみを申し上げます。 感謝と哀悼の意を込めまして、これまでの雨宮さんの作品、およびご出演いただいたコンテンツは、このまま掲載させていただきます。 どうか、ご愛読いただけますと幸いです。

理想の部屋まで何マイル? MILE 17

部屋で、何してる?

時間の使い方が、下手だなと思う。
フリーで仕事をしていると、「事務所借りてるんですか? えっ、自宅? 自宅でよく仕事モードに切り替えられますね。自分だったら絶対気が散って仕事できないです。よく自己管理できますねー」などと感心されることがあるが、きちんとした勤め人にできないことが、もちろん私にできるわけがない。仕事と私生活の切り替えなど、あってなきが如しである。

こういう生活にもいいところはあって、たまに集中力が異常にのってきたときなどは、それが明け方だろうが真っ昼間だろうがゴールデンタイムだろうが、何にも邪魔されずぶっ続けで仕事ができる。翌日何時に起きなければならないという心配は、あまりしなくてもいい(取材や打ち合わせがあるときも、それなりにあるけれど)。それでダーッと仕事が進んだときの爽快感、充実感はたまらないものがあるが、やはり、いい仕事をそれなりのボリュームでしている人は、だいたい規則正しい生活をしているものだ。
きちんと寝て、きちんと食べて、集中できるリズムを作るのが大事なのだろうし、身体のコンディションも良くなければ頭が働かないので、規則正しい生活をするのがいちばん、という考えに異を唱える気はない。ないが、自分がする気もあまりない。

村上春樹がジョギングをしたり、マラソンをしたりしていることで、一時期「長距離を走ることと書くことは似ている」という思想がライター界にはびこって、身近な友達も数人ジョギングを始めたりしていたが、本当に勘弁してほしい。村上さんがジョギングをするのは勝手だが、できればそのことは隠しててほしい。
ただでさえそんなに文才がなく、ジョギングもせず、規則正しい生活もしていない私にとって、締め切りは必ず守り、文才はあふれんばかりにあり、フルマラソンが走れて、規則正しい生活をしている村上さんのような存在は、すごくその……困るのである。誰も私と村上さんを比べたりはしないだろうから安心したいところだが、村上・イズ・ジャスティスな空気に周りが支配され、実際正しいためそれを真似してみんながどんどんヘルシーで規則正しい生活を送るようになっていくと、自分だけが堕落した生活に取り残されたように感じるのだ。

理想の部屋まで何マイル? MILE 17

規則正しい生活をしていないことだけではない。時間の使い方について、後ろ暗いところはまだまだある。例えば、何をしているのかよくわからない時間がたくさんあることだ。なぜ、請求書を書くだけでいつの間にか30分も1時間も経っているのだろう。お茶をいれてぼんやりしているだけで、2時間も経っているのだろう。iPhoneを片手に、SNSを観ながら浪費した時間が何時間あっただろう……。その時間があれば、ハードディスクに溜まった録画も消化できただろうし、本の一冊や二冊も読めただろうし、どうせ無駄に過ごすくらいなら、何か有意義なこともできたし、有意義でなくても娯楽のために使えたはずなのに、なぜか特に有意義でもなく、喜びや楽しみもそれほどない時間がただ、砂丘の砂のようにサラサラと風に吹かれて自分の前からなくなっていく。
ボーッとし始めた10分ぐらいで「これ以上、ボーッとするなら映画でも観たほうがいいんじゃない?」と知らせてくれるアラームでも体内に内蔵されていたらいいのだが、どうやらそういうものはついていないようだ。

これは、確かに無駄な時間でしかないのだけど、「いいからしばらくボーッとさせてくれ、無為に時間を過ごさせてくれ」という気持ちも、ある。仕事やほかのことで頭の中はぐちゃぐちゃ、映画や本に入り込めるほどの気持ちの余裕もなく、かと言って即眠ってしまえるほど落ち着いているわけでもない、気持ちがざわついていて落ち着かない時間。無駄だとわかっていても、この時間をただやり過ごすために、ぼんやり、何のためにもならない時間の中で、自分を少しずつ落ち着かせていくこともある。
そういう時間も、自分には必要なのかもしれない、と思ったりもする。

しかし、家に人を招くときなど、なんだか不安になってしまう。この「だらけきった生活」が、部屋のあちこちに染み付いて、どんよりした空気を撒き散らしているのではないかと思ってしまうのだ。もちろん、そんなこと、実際にだらけているところを見なければわからないものだけど、なんとなくこう、シャキシャキっと生活している人の部屋の空気は澄んでそうだけど、うちの空気は淀んでいそうというか……。そんな気がしては、あわてて掃除したり片付けをしたりするが、なんかこう「表面を取り繕っている感」が否めない。

仕事をばりばりやっていたり、何かに集中している時間の長い人のほうが、部屋はとっ散らかっているのかもしれないが、そこには「充実した空気」が漂っていそうだ。雑然としていても、生きたものの気配がそこかしこにある、エネルギーのある部屋になっているのではないだろうか。
毎日毎日、無駄なく充実した時間を過ごさなくては、と思うのは、私にとっては重荷だけれど、今の自分に必要なもの、集中しているものがある、生きた気配のある部屋には、なっていてほしいと思うのだ。

文=雨宮まみ

雨宮まみ

ライター。編集者を経てフリーのライターになり、女性としての自意識に向き合った自伝的エッセイ『女子をこじらせて』(ポット出版)を上梓、「こじらせ女子」が2013年度の新語・流行語大賞にノミネートされる。 著書に、対談集『だって、女子だもん!!』(ポット出版)、『ずっと独身でいるつもり?』(ベストセラーズ)、『女の子よ銃を取れ』(平凡社)など。

プロフィール写真=松沢寫眞事務所 / イラスト=網中いづる

「モチイエ女子project」公式Facebookページ「モチイエ女子Park」
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